LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
盗品の市場

2人を乗せたトゥクトゥクは、2人にまったく縁のない金商、パール商、宝石商を経由し、やっと最初の目的地であるナコーン・カーセムにたどり着いた。

 

広い市場だが、シンさんが言うには、ここで売っているのはすべて盗品だという。

でも俺からすれば売り物には見えず、盗品でもなく廃品だ。

 

使いかけのシャンプー、片方だけのビーチサンダル、洗濯していない下着。

刃物で切りつけた跡が残るバッグまで並んでいる。

きっと中身もこの市場のどこかに並んでいるに違いないが、それもきっとロクでもないモノばかりだろう。

 

そんなゴミだらけの市場で、俺はついに俺のバックパックの欠片を見つけた。

膨らんでいたから中身はバラされていないようだった。

 

「シンさん、あれだよ」俺は囁いた。

「いくらなのか聞いてみようや」シンさんはやけに面白がっている。

「確かに。どのくらいの価値があるか知りたい」と応えると、シンさんは笑いながら店員に声をかけた。

 

続く

次回の話/ブランニューの埃っぽいバッグ

前回の話/生き死を賭けたプロ

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。