キング アーサーのここだけの話
ちょうどいいサイズ感
この市場にあるものはすべて盗品だ。
旅行者のバックから抜き取った無料で配布されているようなガイドマップ。
すでにメッセージの書き込んである絵葉書。
ホームシックにならないように持ってきた家族との写真。
ここではなんでも売り物として並ぶ。
シンさんは俺にバックパックを出すよう合図した。
そして大げさな演技をしながら、いまや売り物として並んでいる俺のバックパックの上蓋を合わせ、大きな声で歓喜した。
「ジャストフィット!」
クサイ演技にもほどがあるってもんだ。
ジャストフィットなのは当たり前。
それでもシンさんは、店員に尋ねた。
「ちょうどいいサイズ感だから買おう。これいくらだ?」
盗まれた俺のバックパックの上蓋を、買い戻そうというのか。
そのバッグには、果たしてどんな価値がつくのだろうか。
俺も自分のことながら、すごく興味が湧いた。
シンさんのハウマッチの問いかけに、店員は応えた。
「1バーツ」
たったの5円・・・。
続く