キング アーサーのここだけの話
日本国政府の秘密
シンさんは「ニンジャ」と答えた。
「ニンジャ〜?!」 トゥクトゥクの天井が破れるのではないかと思うほど、ドライバーは大声を張り上げた。
俺はバカバカしいと思ったが、ドライバーには髪の毛を1本に結んだシンさんが、それらしく写ったのだろうか。
ヒッピームーブメントから少し時は流れ、当時は長髪の男なんてどこにも見当たらない、時代錯誤のヘアスタイル。
「ニンジャの雇い主は誰なんだ」と、興味を持ったドライバーは率直な質問を投げかけた。
「ガバメント」シンさんは答えを用意していたかのように、間髪入れずに返した。
時代の政権。本物の忍者もそういった感じだろう。
「どんな仕事をするんだ」ドライバーはさらなる関心を寄せた。
「トップシークレット」シンさんは立てた人差し指を、静かに唇に当てた。
複雑な英会話ではドライバーがあまり理解しないだろうと考えてなのか、極力シンプルな言葉で答えていた。
ニンジャに興味を持った男に対して<最重要機密>は、なんとも魅惑のワードだったことだろうか。
最重要機密の核心は知らないが、日本政府が秘密にしているニンジャに出会えたことに気をよくしたドライバーは、ささやくような声でオウム返しに「トップシークレット」と言い、人差し指を唇に当てマネをした。
その仕草のまま視線を俺に移し「お前は?」と尋ねてきた。
ここで負けるわけにはいかない。
俺はまだ大学院生にも関わらず、見栄を張った。
「アイ・アム・ドクター」
しかしドライバーはピクリともせず、トゥクトゥクを降りた。
続く