ヒツジ飼いの冒険
第18話 絶海
ヒツジたちとしばしの別れを告げたレオナルドは、また港町へと戻った。
そこで歯ブラシとしばらく分の食料、そして地図を購入した。
ピアネータ号が最初に到着した港でレオナルドは下船したので、ここがどの大陸であり、どんな国があるか知らなかった。
購入した地図からわかったことは、ここは大陸ではなく、洋上に浮かんだ諸島群だったこと。
この港は諸島群の中にある唯一の大きな街ではあるが、諸島群の中では一番小さな島であること。
7つある諸島の一番小さな島であっても港から島の反対側まで歩けば、ゆうに3日はかかることだった。
さすがに港町は人種の坩堝で、多様な民族で構成されていて、レオナルドが持っていた金貨も使用することができた。
ヒツジたちの待つ牧草地からこの港町まで、半日たっぷりと歩く距離。
レオナルドは夜通し歩いてヒツジのところへ戻るより、その日は港町で一泊することを選んだ。
地図には、どんな人種の民が暮らし、どのような言語が公用語となっているかという情報はない。
だから港の酒場で、この島の情報を集めることにした。
だが夜の酒場でわかったことといえば、この島には本当のことを話してくれる人はいないということだけだった。
聞く人、聞く人すべてが、首都は一番大きな島にあり、そこに政府機関も集中するが人は住んでいないと答えた。
国の名前はホルス。
国王にちなんだ名前であり、7つある島で人が住んでいるのはこの一番小さな島な島だけだと、誰もが口を揃えた。
政府機関で働く人々は、毎日わざわざ一番大きな島まで通っているのだろうかと、レオナルドは不思議でならなかった。
たった1日の滞在で不思議と思うことを挙げれば暇がない。
街では乗り物を見かけない。
クルマはおろか、港に漁船を見ることもない。
港にあるのは、大型船が来航したときに港内を牽引するため何艘かのタグボートだけ。
そのタグボートの動力はエンジンではなく、人力によるもの。
数十人の漕ぎ手が櫂をかき上げ、人力で大型船を引っ張るのだ。
港付近に人の営みが密集している。
そこから出ると草木の生い茂る丘陵地へと風景がいきなり変わり、舗装路も途絶え獣道となる。
地図上で確認しても、街らしき街はない。
唯一の街がこの港町であり、道が描かれているのもこの港町のみとなっている。
首都とされる地域は街の色ではなく、濃い緑で塗られた山林。
他の地域と違って地名の前に二重丸が記されているから、きっと首都なのだろうと判断しただけだ。
しかしこの諸島群はホルス王が統治するホルス王国だという。
地図上には王の住む城も記されていなければ、政府機関を示す記号も見当たらなかった。
ヒツジ飼いの冒険(第19話)へ続く
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*ヒツジ飼いの冒険は毎週日曜日12:00公開を予定しています。