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若気ノイタリーの回顧録 南アフリカの”チンチン”

こんな時こそチンチンの話

日々シリアスなニュースばかり飛び込んできて、ちょっと滅入っちゃう今日この頃。

半年ほどカナディアンロッキーにあるバンフという街で暮らしていた僕も、国立公園自体が閉鎖され何もできなくなってきたので先日帰国。現在は自宅にて2週間の自己隔離してる次第である。

暇なので毎日SNSやら何やらで海外の友達から各地の情報を聞いたりしているのだが、諸外国は思った以上に長期戦になることを想定してるらしい……。早くまた自由に出歩ける世界に戻る事を祈るばかり。

 

さて、つい先日南アフリカの知人から連絡があり、ケープタウンもロックダウンをしているという話を聞いた。とりあえずは3週間続くらしいが、貧困層が多い同国においてこの状況は早く解消されて欲しい大問題だとのこと。

全くおチャラけた記事を書いている場合じゃないのだが、COVID-19を心配せずに海外に行けるようになった時、誰かが彼の地に赴く可能性を作れるとしたらこの記事を書く意義もある。そう思って今キーボードを叩いている。

本当は”チンチン”の事を記事にするつもりは無かったのだが、ちょっと思いつきで書かせていただいた。

 

THE日本を勘違いした和食レストラン「Tjing Tjing」

イラッシャイマセ!

 

「一体この記事ではナニが見れるんだ!? 」と心躍らせていた読者には大変申し訳ない。

今回紹介するチンチンは、ケープタウンのダウンタウンにあるレストラン。正しくはティンティンなのだろうが、まあそれはさて置き。

 

ケープタウンにある多くのジャパニーズレストランで食事をしてきた、ジャパレスマスターの僕。

彼らの名誉の為に言っておくと、中には日本人が経営している正統派なお店もある。しかしそうでない店もあり、それらは麺が柔らかすぎるラーメンはもちろん、マヨネーズがふんだんに使われたサウスアフリカン・スタイルの寿司やフライド寿司など、日本人がびっくりする料理を出してるなんて事も(意外とそれが美味しかったりする)。

そんな中でも、僕のド肝を抜いてきたのがこのチンチン。今回は日本愛に溢れる同店の魅力をお伝えしよう。

 

築200年だというトラディッショナルな建物に入居しているチンチンは全4フロアから成っており、各エリアごとにメニューや雰囲気も変えている。

1階の「TORII」はTokyoのYokocyoをイメージした居酒屋レストラン。2階の「MOMIJI」は週末の夜限定でKaiseki料理を提供、酒とおつまみに特化した「MOMIJI Lounge」も併設されている。そして最上階には、カジュアルにお酒やおつまみを楽しめる若者に人気のルーフトップバーがある。

MOMIJIには行けず、ルーフトップバーには行ったけど写真を撮っていなかったのでTORIIだけの紹介になるが、とにかく様々な層のお客に向けてアプローチしているということだけはお伝えしておきたい。

 

趣向を凝らした店づくり

「原宿男子」。ものすごいインパクトのイラストが掲げられたTORIIの一角。

店内はTokyoのモダンさと伝統、そして少しオタクカルチャーが融合された雰囲気。日本人からすると一笑に伏してしまいかねないが(というか自分はこうしてネタにしてしまっているが)、これが外国の人から見たクールな日本の姿なのかもしれない。

それも踏まえて、僕がこの店を甚く気に入ってしまったのは日本の文化に対する愛とリスペクトを感じたからだ。

メニューを開くとこんな感じ。ランチタイムはBentoやOnigirazu(握らずサンドウィッチのようにしたおにぎり)といった外国らしい和食で、夜はラーメンや丼ものをメインに、餃子、焼鳥、天ぷらなどのおつまみが展開される。

僕がいた時の南アフリカランドは1R=8円位だったので、メインを食べても800円程度。街の相場からしたら中の上くらい、和食屋にしてはリーズナブルな印象だ。

日本の藍染をイメージした藍色の制服に身を包んだ店員さんに注文をし、料理が到着までしばし店内を眺めてみる。

焼鳥に種類があるという事から察するに、実は日本の事をよく心得ていた上でヒップに南アフリカナイズしているのでは? とも思えてきた。

 

が、衝撃的なものを発見してその考えを撤回。

 

鳥居のイス! 御神域と我々の住む俗界を隔てる境界であり神社の象徴でもある鳥居を、人間が座るイスに!

我々には発想すらできない離れ業。これは日本のことが分かっているとは言い難い……。でもインスタ映え間違えなし。

きっと経営には日本人が関与していないのだろう。

更に気がついたのは、黒板に書かれた「シェフの特産品」の文字。speciality=特産品。間違いではないけど「シェフのイチオシ」ぐらいに直してあげたい衝動に駆られた。

 

そしてお箸の袋。漫画風の柄が描かれ、背面には箸置きの作り方の指示が。漫画雑誌みたいな紙を使っていて、インクのかすれ具合はまさにそのもの。ここからは彼らのコダワリが伝わってきた。

 

チンチン流の日本食を美味しく発信

キョロキョロしながら考えを巡らせていると、まずはビールと餃子が到着。

七味がかけられたスパーシーな一皿は、少し重ためなBlack Label Beerにマッチ……したと思う。

 

続いてバター味噌チキンラーメンが着丼。盛り付けが素晴らしく食欲をそそる。半熟に仕上げられた卵は中々海外では出会えない。

味はほとんどバターに支配されて味噌の味はあまり感じられなかったけれど、西洋の食文化に基づいている南アフリカでは寧ろ喜ばれるテイストかもしれない。

 

しかし、何だかさっきから目がチカチカするなぁ。お盆はどんなものを使ってるんだ?

 

 

と、丼を上げるとこれが登場。

 

独自の世界観が炸裂していて、ここまでくるとツッコミを入れているのが野暮に思えてくる。

もう正統派でなくても愛があればいいじゃないか。

考えて見たら日本だって正統派じゃない変なものだらけじゃないか。クリスマスにターキーじゃなくチキンを食べてみたり、箸で食べるパスタ屋があったり、変な英語が書かれたTシャツがあったり、○ッキーマウスが日本語を喋ったり。

そうだ。僕もローカルなもの好きだったら、世界で均等化したモノを良しとしないでローカライズされたモノこそ評価すべきなんだ。

”好き”の部分だけ抽出した、彼らのカッコイイ日本像は唯一無二。「チンチン」はこれで大正解なんだ!

 

ただご飯を食べに行っただけのに、彼らは僕にいい気づきを与えてくれた。

いち早い再開を願う。

 

Infomation

Tjing Tjing

Address:165 Longmarket St, Cape Town City Centre, Cape Town, South Africa

Web:https://www.tjingtjing.co.za/

Instagram:https://www.instagram.com/tjingtjingbar/

アウトドアライフスタイルマガジン「HUNT」の創刊から編集者として携わりフリーランスに転身。現在はワーキングホリデーで海外に住みながらパートタイムで日銭を稼ぎ、英語を練習し、現地で見つけた面白いものを取材して雑誌やwebマガジンで紹介中。