COOK,  LIFE

珈琲をもう一杯 / 第三十五話「マンデリン・前編」

ゴロゴロ、ゴロゴロ、ピカッ、
たか兄ぃが空を見上げながら
「そろそろ降って来そうだな。
おい、ペン太、豆を取り込むぞ」

疲れていたのでつい本音が
「分かったよ兄ぃ。でも、おいら
こんな作業飽きたよ。」

「何言ってんだ。 ペンギンの
くせに」
「何も・・そこまで言わなくても」
「降ってくるぞ、早く手を動かせ!」

発端は、
背が高く赤ら顔の男を連れた役人
が村にやって来て言ったんだ。
「お前達、この方の持って来た
樹を植えて実を採るんだ」と。

なんで命令されるのか分からない。
おいら達は当然反発したんだけど、
「この土地はこの方達の土地だ。
お前達に貸しているのだから
命令に従え」と

初めは逆らっていたたか兄ぃも
なにやら懐に入れたと思ったら
にやけながら急に態度を変え、
従う様にって。

「けっ、何なんだよ、たか兄ぃ」

やむなく、おいら達はその樹を植えて
実の栽培に乗り出したのさ。
おいら達の住む土地は高い山の
中腹で朝晩の度差も激しいんだ、
だけど何故か綺麗な赤い実が沢山
採れたんだ。

採れた実は、皮を剥いて干した後
種を取り出すんだけど
これがやっかい
しょっちゅうスコールが
降り、いつも生乾きみたいになるんだ。
まあ、生乾きで脱穀しちゃうんだけどさ

集めた種は背が高く赤ら鼻の男
達が取りに来て、近くのバタンとか
言う港に運んで船でどこか遠くに
運ばれてるって聞かされた。

部族の皆は安い賃金で働かされ
ほとほと疲れていたところ、
世界中を巻き込む戦争が起こっ
たんだ。

おいらは見たぜ。
空を低く飛ぶ
ゼロファイターって言うのかい?
深緑のやつさ。

つづく

豆に困ったら

スリーペンギンズへ!

航空会社に勤めていたものの、うん十年前は「カヌーイストになるんだ!」と、チキンラーメンを食しながら川を下る。 かと思えば、「ウミンチュになるぞ!」と、沖縄の海で鯨を追いかけたりもした。 が、「ちゃんと仕事はしてるのか!」と、皆が疑問を呈しだしたので、「こりゃいかん」と退職。 まっとうな人生を送るべく、珈琲屋として再スタートを切る。 深煎り珈琲が味わえる『スリーペンギンズ』(横浜市磯子区滝頭 3-4-22)の店主に収まる。