LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
グーグルなき時代

ニューワールドにも足を運んだ。

カオサンは旅人が行き交う交差点、クロスロードと呼ばれていたが、数ブロック離れたところにあるニューワールドは、情報のウェアハウスだった。

本当に旅をしている連中の生の声、裏の情報まで集まる、総合商社の倉庫のようだった。

 

「それが知りたいなら、あそこに行きな」

知りたい情報のピースは必ず見つかり、6人にたどり歩けば、ムー大陸ですら発見できそうだった。

グーグルなき時代、いまのグーグルより膨大な真実があの場所に集まっていた。

 

俺がニコールの名前を知っていれば、彼女の居場所を簡単に突き止めることができたかもしれない。

ブロンドヘアに青い瞳、ニコール・キッドマン似の女性。

それだけではあまりにも情報量が少ない。

そんなキーワードでは、本物のニコール・キッドマンにたどり着いてしまう。

 

あとわかっているのは、ビリヤードの得意な日本人風の男と一緒にいるということ。

そんなシーンを思い浮かべていると、横恋慕みたいでとたんに自分が情けなくなった。

 

俺はニューワールドを後にし、カフェへと戻った。

すでに3時をまわっていた。

 

新たなるチェックイン客が、レセプションに列を作っている。

そこにアンジェリーナの姿はなかった。

髪の毛をひとつに束ねたあの男はオープンカフェの床に直接尻をつき、膝を立てて座っていた。

 

続く

次回の話/アーサーの由来

前回の話/旅人が交差する世界の中心

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。