キング アーサーのここだけの話
グーグルなき時代
ニューワールドにも足を運んだ。
カオサンは旅人が行き交う交差点、クロスロードと呼ばれていたが、数ブロック離れたところにあるニューワールドは、情報のウェアハウスだった。
本当に旅をしている連中の生の声、裏の情報まで集まる、総合商社の倉庫のようだった。
「それが知りたいなら、あそこに行きな」
知りたい情報のピースは必ず見つかり、6人にたどり歩けば、ムー大陸ですら発見できそうだった。
グーグルなき時代、いまのグーグルより膨大な真実があの場所に集まっていた。
俺がニコールの名前を知っていれば、彼女の居場所を簡単に突き止めることができたかもしれない。
ブロンドヘアに青い瞳、ニコール・キッドマン似の女性。
それだけではあまりにも情報量が少ない。
そんなキーワードでは、本物のニコール・キッドマンにたどり着いてしまう。
あとわかっているのは、ビリヤードの得意な日本人風の男と一緒にいるということ。
そんなシーンを思い浮かべていると、横恋慕みたいでとたんに自分が情けなくなった。
俺はニューワールドを後にし、カフェへと戻った。
すでに3時をまわっていた。
新たなるチェックイン客が、レセプションに列を作っている。
そこにアンジェリーナの姿はなかった。
髪の毛をひとつに束ねたあの男はオープンカフェの床に直接尻をつき、膝を立てて座っていた。
続く