キング アーサーのここだけの話
開き直った店員
売り場に並んだ年季の入った革のサイフをシンさんはつまみ上げた。
現金やカードは抜き取られ、中身はもちろん空っぽだ。
「このサイフをホテルで盗んだ瞬間も透視してた」
真実を求めるために、シンさんは平気でウソをついた。
店員は気まずそうにしながら「ファック」と小さな声で反論し、顔を背けた。
「ヘイ、クリーナー。ビンゴだろ」シンさんは笑いながら、顔を背けた店員の方にまわりこみ、瞳の奥を覗き込んだ。
「この市場にあるものは、全部盗品だ。あの店も、その店も、全部盗品だけだ。俺だけじゃない」と、店員は開き直った。
「ジュライホテルでクリーナーとして働いてるよな」シンさんは問い詰めた。
どうやら<クリーナー>というのはあだ名ではなかった。
その店員がジュライホテルの掃除夫としても働いていることを最初から知っていて、<クリーナー>と呼んでいたのだ。
「ノー」それでも店員はシラを切った。
「お前が働いているところも、ずっと透視してた」シンさんは譲らなかった。
「ファック! バカげた話だ。透視なんてできるわけないだろ!」相手も頑として譲らなかった。
続く