LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
ブランニューの埃っぽいバッグ

悪辣なことも笑いながらできる。

野上真一はそういう男だ。

 

「この埃っぽいバッグは、昨日は並んでなかったな」とシンさんは笑顔で店員に話しかけた。

「今日入ったばかりのブランニューだ」

「ブランニューなわりに汚い」と言いながらバッグを汚そうに親指と人差し指の指先でつまみ上げ、目尻にシワを寄せた。

「中身はクリーンだ」店員は怪訝な顔で言い返した。

 

「ヘイ、クリーナー。中には洗面道具とコンタクトレンズが入ってるな」

俺は、シンさんが<クリーン>という言葉に反応して、店員に<クリーナー>とあだ名をつけたのだと思った。

 

「ビンゴ! 正解だ。透視できるのか」店員はアゴが外れんばかりに驚いていた。

だが実のところ、シンさんは俺から聞いた内容を伝えただけだ。

それなのに目を細め、いかにも透視したかのような目つきでハッタリをかました。

「そうだ、透視ができるんだ。クリーナーが盗んできた瞬間も透視してた」

 

続く

次回の話/開き直った店員

前回の話/盗品の市場

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。