キング アーサーのここだけの話
突然降り出したスコール
海の方からはゴロゴロと、山側からゴトゴトと音が鳴り響き、両者がバンガローに迫ってきた。
ゴトゴトの主はピックアップ・トラックのタクシー。
ゴロゴロより一馬身先にゴールした。
ピックアップ・トラックの荷台から飛び降りたのは、あのユダヤ系の女だった。
荷台から降りて一息つく間もなく、突然降り出したスコールから逃げるように、彼女はバンガローの母屋に飛び込んだ。
そして辺りを見渡すと、カウチで寛ぐ俺たちに「ハ〜イ!」と、声をかけてきた。
雨にも関わらず「グッデイ」とシンさんは言い、俺は「ハイ!」とオウム返しに挨拶した。
「レセプションはどこ?」彼女は聞いてきたが、ここがまさにレセプション。
俺たちが海から戻ったときから、バンガローのオーナーは見当たらない。
「ブッキングしてないけど、泊まれるかしら?」と、彼女は続けざまに質問してきた。
「たぶん」と俺は応えたが、シンさんは「空きがなかったら、僕の部屋に泊まるといい」と言って笑った。
「じゃあ保険で、その部屋をブッキングね」と言って彼女も笑った。
シンさんはいったん立ち上がり、「オーナーはすぐに戻ってくるよ。それまで座って待ってれば」と席を譲った。
彼女はシンさんの勧めに応じ、ひとり掛けのカウチに腰を降ろした。
続く
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