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ヒツジ飼いの冒険
第27話 暗闇

ジャックの言った交渉人があらわれる前に何万もの鳥たちが空を覆い、一方向を目指し飛んでいった。

その鳥たちは徐々に数を増していき、やがて地上に届く太陽の光を遮るほどになった。

 

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鳥たちが飛び去るまで、暗闇と言えるほどの時間がしばらく続いた。

「攻撃の準備が整ったな」ジャックが言った。

「攻撃の前に、交渉人がくるって話じゃなかった? それが最後のチャンスって言ってなかった?」

「ああ、言ったさ。それに交渉が攻撃をかわす最後のチャンスなのも本当だ」

「じゃあ、交渉の前に攻撃の準備をするってどういうこと」

「交渉が決裂した瞬間、攻撃を仕掛けるってことさ」

「そんなの、銃をこめかみに突きつけられた状態で交渉するのと同じじゃないか。そんなんじゃ、まともな交渉なんてできないじゃないか」

「そうだ。ヤツラはまともな交渉をしたいんじゃない。単に温和に対応しているうちに、引き返して欲しいだけだ」

「そんなの交渉人の役割じゃない」

「そうだ。交渉人なんかじゃない。ワシラが便宜上、勝手に交渉人と呼んでるだけで、王国で唯一ワシラと会話ができる相手にすぎん」

 

暗闇からぼんやりとした光が届きはじめ、やがて明るさを完全に取り戻した時、目の前にジャックの言う便宜上の交渉人がいた。

その交渉人は1人ではなかった。

無論、人でもなかった。

 

ヒツジ飼いの冒険(第28話)へ続く

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*ヒツジ飼いの冒険は毎週日曜日12:00公開を予定しています。

カヌーイストなんて呼ばれたことも、シーカヤッカーと呼ばれたこともあった。 伝説のアウトドア雑誌「OUTDOOR EQUIPMENT」の編集長だったこともあった。いくつもの雑誌編集長を経て、ライフスタイルマガジン「HUNT」を編集長として創刊したが、いまやすべて休刊中。 なのでしかたなくペテン師となり、人をそそのかす文章を売りながら旅を続けている。