キング アーサーのここだけの話
シリアスなタイミング
俺は苦笑しながら言った。
「みんなでシンさんのこと心配してるこんなシリアスなタイミングで、<地獄で会おうぜ>なんて言うようなセリフじゃない!」
確かに、とみんな真面目な顔で頷くが、すぐに笑えた。
みんなの心に陽気な気分の波が巡ってきているタイミングだったのだろう。
だからシンさんを陽気に送り出すことができた。
シンさんはスキンカヤックに足をしまわず、デッキに足を投げ出したまま海へと漕ぎ出した。
視界からシンさんが消えると、急に重い気分が襲ってきて、みんなが重い空気に包まれた。
「シンは帰らない気がする」ナタリーが呟いた。
「今日は帰らないかもしれないけど、明日には元気に帰ってくるわよ」穏やかそうなジュリーが、またナタリーの肩を抱いて言った。
続く
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