LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
シリアスなタイミング

俺は苦笑しながら言った。

「みんなでシンさんのこと心配してるこんなシリアスなタイミングで、<地獄で会おうぜ>なんて言うようなセリフじゃない!」

確かに、とみんな真面目な顔で頷くが、すぐに笑えた。

 

みんなの心に陽気な気分の波が巡ってきているタイミングだったのだろう。

だからシンさんを陽気に送り出すことができた。

シンさんはスキンカヤックに足をしまわず、デッキに足を投げ出したまま海へと漕ぎ出した。

 

視界からシンさんが消えると、急に重い気分が襲ってきて、みんなが重い空気に包まれた。

「シンは帰らない気がする」ナタリーが呟いた。

「今日は帰らないかもしれないけど、明日には元気に帰ってくるわよ」穏やかそうなジュリーが、またナタリーの肩を抱いて言った。

 

続く

次回の話/水平線のさらに先

前回の話/地獄で会おうぜ

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。