キング アーサーのここだけの話
目に見えぬ敵
オオトカゲが去っていくのを俺はじっと見ていた。
目で追っていたのは俺だけじゃなく、みんなそうだったようだ。
何の言葉も発さず、微動だにもしない沈黙の時間がしばらく続いた。
オオトカゲが完全に見えなくなるまで、永遠とも思えるくらい長い時間がかかった。
1歩1歩が、それほどゆっくりしたものだった。
故に王者の風格を乱さなかったのだ。
「あんな奴は島にうじゃうじゃいる」
やっとシンさんが口を開いた。
「怖いものは目に見えるものより、目に見えないものだよ」と続けた。
うじゃうじゃいるのか、ちょっとしかいないのか、見えないからさっぱりわからない。
それが敵であり、恐怖でもあると。
このときは何のことを言ってるのかさっぱりわからなかったが、数日後それを思い知らされることとなった。
続く
次回の話/恐怖のなくなったジャングル
前回の話/真っ先に狙われるのはケイト
「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!