LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
目に見えぬ敵

オオトカゲが去っていくのを俺はじっと見ていた。

目で追っていたのは俺だけじゃなく、みんなそうだったようだ。

 

何の言葉も発さず、微動だにもしない沈黙の時間がしばらく続いた。

オオトカゲが完全に見えなくなるまで、永遠とも思えるくらい長い時間がかかった。

1歩1歩が、それほどゆっくりしたものだった。

故に王者の風格を乱さなかったのだ。

 

「あんな奴は島にうじゃうじゃいる」

やっとシンさんが口を開いた。

「怖いものは目に見えるものより、目に見えないものだよ」と続けた。

うじゃうじゃいるのか、ちょっとしかいないのか、見えないからさっぱりわからない。

それが敵であり、恐怖でもあると。

 

このときは何のことを言ってるのかさっぱりわからなかったが、数日後それを思い知らされることとなった。

 

続く

次回の話/恐怖のなくなったジャングル

前回の話/真っ先に狙われるのはケイト

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。