COOK,  LIFE

珈琲をもう一杯 / 第三十話「コーヒールンバとモカ・マタリ」

緊急事態宣言や外出自粛要請
まるで現実世界ではないような
事態に頭がついて行かず
大変だ、大変だと言いながら
眠りこけてしまった僕

四ツ辻に佇んでいると
どこからともなく
偉そうなお坊さんが現れ

「これを飲んでみなさい」と

しびれるような香りいっぱいの
琥珀色の飲み物を差し出してきた

それを飲んだ僕は
自然と身体がリズムを刻み
心がうきうき

とても不思議この気分
頭の中には
楽しいルンバのリズムが流れ

南の国の情熱のアロマ
なんと素敵な飲みもの
コーヒー・モカ・マタリ
さあ陽気に踊ろう
愛のコーヒールンバ

あれっ
ルンバの踊り方を知らない
僕が踊ってる。

気分を少しでも明るい方へ明るい方へ
と、この曲を口ずさんでいたから、
こんな夢を見たんだろうか。

西田佐知子が歌った「コーヒールンバ」
原曲とはタイトルも歌詞も異なるけど
色々な人にコピーされた名曲。

この曲に登場する
モカ・マタリは
イエメンの珈琲豆
ジンジャー、カルダモン、
ブラックペッパー等の香辛料と完熟フルーツが
混ざり合ったような独特の香りが
高貴、貴婦人等に喩えられたりします。

特に深煎りにしたマタリは深いコクと
芳醇な香りにしびれます。
本当にコーヒールンバの歌のような
気分にさせてくれる珈琲です。

「ねえ、なに寝てるの。マタリ美味しかったね」
と言う声で目が覚めて
僕の目に映る景色がどこを見ても廃墟

なんて映画みたいなことには
ならないで欲しい。

 

 

 

 

航空会社に勤めていたものの、うん十年前は「カヌーイストになるんだ!」と、チキンラーメンを食しながら川を下る。 かと思えば、「ウミンチュになるぞ!」と、沖縄の海で鯨を追いかけたりもした。 が、「ちゃんと仕事はしてるのか!」と、皆が疑問を呈しだしたので、「こりゃいかん」と退職。 まっとうな人生を送るべく、珈琲屋として再スタートを切る。 深煎り珈琲が味わえる『スリーペンギンズ』(横浜市磯子区滝頭 3-4-22)の店主に収まる。