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若気ノイタリーの回顧録 アフリカ最大の動物保護区で自走サファリ旅 -6

この素晴らしき世界

予想外に長くなってしまったサファリ編。クルーガー・ナショナルパークでの ぼっちドライブも最終日を迎えた。

この朝はしっかりと目覚ましの時間どおりに起床し、太陽が昇ってすぐに行動を開始。

砂埃を気にしながらも窓を開けて走っていると、鳥や哺乳動物の声いつにも増して聞こえてきたので、僕も朝焼けに照らされる動物たちに「Good morning」と大声で返答した。

最終日だという事もあってか感受性が高まってたのかもしれない。

 

I see trees of green, red roses too.
I see them bloom, for me and you.
And I think to myself, what a wonderful world.

ルイ・アームストロングの「What a Wonderful World」を聞くにはこれ以上ない朝。

遠路はるばる来てよかった。心の底からそう思え、独りジーンとしていた記憶がある。

 

しまいには、動物たちがこっちをジーっと見つめてくるのを見て、この動物たちは僕に何かを訴えているんじゃないか? とも思えて来た。

「……鈴木、南東へ行け」。

ヌーがそう言ってる気がしたので、従ってみたりもした。

すると川べりの開けた場所に出て、向こう岸にはシカっぽいのが。いや、インパラ、ウォーターバックはこれでいてウシ科か。

とにかく、なんだかオアシスに来たような素敵な光景だった。

 

からの、ちょっとしたアクシデント

旅先では絶対何かしでかすのが鈴木という男である。

しばらく走ってると、木の死角からキリンが飛び出して来てあわやキリン身事故を起こしそうになった。

本当に車との距離1、2メートルほどまで接近してたと思う。今回はマジで危なかった。キリンの本気ダッシュが見れたのは貴重な体験としてまぶたに焼き付いている。

うん。キリンを轢きそうになったエピソードを持ってる人は多くないと思うので、後世語っていこうと思う。

いや〜。動物を轢いてしまったら莫大な金を払わなきゃならないのかな……って考えただけでも恐ろしい。

・・・・・・

 

アクシデントは続く。

しばらく川に沿っていたものの意外と川が見れるポイントがなく、脇道がないかな〜と探っていたところ、川に通じてそうな道を発見。

ワニでも見れるかなと思って近づいていったところ・・・川側の道がえぐれていて脱輪してしまった!

右前輪が落ちて、見事左後輪が上がった状態に。

すぐに懸命にバックを試みるも、動かず。アワアワしながら、震える手でスマホを操作して誰かに連絡しようとするも圏外。基本公園内では車外に出ることが禁止されているが、外に出て車が通るのを30分ほど待ってみた。

しかし四国ほどの大きさを誇るこのクルーガー国立公園。しかもマイナーそうな道を選んでしまったがために、全く車が通らない。

もう既に腹をゴリゴリやってしまったし、車壊れてもいいからやったるわ! と覚悟を決め、ハンドルを回してアクセルをブンブン踏んでやって頑張ったら、なんとか脱出できた。

全く人騒がせな……。

 

まあ、サファリ旅の最後にいいネタが出来たという事で消化しつつ、そろそろ出口に向かう事に。

こちらはその道中で見つけたワイルドドッグかハイエナのお尻。

思い返すとアグリーファイブ(Ugly5)と呼ばれる不細工な動物(ハイエナ、ヌー、イボイノシシ、ハゲワシ、アフリカハゲコウ)すらコンプリートならず。ビッグファイブは意外なことにバッファローだけが見れなかった。

 

サファリ旅の有終の美を飾ってくれたのはゾウさんの大行進。お母さんゾウがこちらを見ながらノソノソと道を横断していった。

 

僕はこの三日間で本物ワイルドライフを見てきて、世界への認識が広がった気がする。

ゲームで新しいステージに進んで、別の面が出てきたあの感覚のように、「こんな世界が実際に存在するんだ」という感動を味わったのだ。

また、いま東京で僕がこの記事を書いているこの瞬間にも動物がサバンナで暮らしている。そんな当たり前のことを頭でなく眼で見て理解できた。

 

しかし、大きな気づきがあった一方で、失ったものがある。それは”動物園を楽しむ心”。

恐らく今後誰かと動物園に行っても、素直に感動できないだろう。あげく「南アフリカのサバンナでは〜」と講釈を垂れてしまう事になるかもしれない。それは本当にウザったいと思う。

 

最後はチーターの尻尾をおさわり

もう動物園はちょっと……。と言いながら、クルーガー国立公園から空港に戻る道すがら、早速動物園みたいなところに行ってみた。

だって、ビッグファイブのヒョウをちゃんと見れなかったから!

 

訪れた”モホロホロ・野生動物リハビリセンター”は、負傷した動物が自然に帰れるように世話をしている施設。そして同時に、サバンナに戻れなくなった動物を保護・飼育して動物園を形作ることで、来場者に学びを与える機会を提供している。

約千数百円の入場料には2時間ほどのガイドツアーが含まれていて、各動物ごとの説明を受けることができた。

陽気なガイドさんが動物の骨当てクイズを開催。だいたい何を言っているか聞き取れなくて、他のお客さんが笑っているのに合わせて笑ってみたりした。

 

威圧感のあるミミヒダハゲワシ。大きな鳥のゲージの中に入れてくれて餌付けをさせてくれたりしたが、子供だったら泣きかねないルックス。

 

日本の動物園ほどエンターテイメント感はないし、動物も媚びない(笑)。環境保護活動をベースとしているのでそれぞれの飼育スペースは広く取られている印象だ。

金網が邪魔してるので良い写真ではないけれど、広さがわかっていただけるだろうか?

 

ヒョウは3匹ほど同じ区画で飼育されていて、木の上で寝てたり、木陰で休んでおられた。

 

こちらはチーター。ヒョウの斑紋と違って柄が黒紋なのが見分けるポイント。ちなみにチーターは他の大型のネコ科の動物と違って昼行性。座っているがその眼差しは鋭い!?

 

最後はチーターと記念撮影。恐る恐る尻尾だけ触らせてもらって、僕のアドヴェンチャーは終了。

感慨に耽りながら空港までの400Kmの道のりをドライブし、ケープタウンに飛んだ。

 

ちなみに脱輪した時の車体の傷は気付かれず、今だレンタカー屋から請求の連絡はない。

アウトドアライフスタイルマガジン「HUNT」の創刊から編集者として携わりフリーランスに転身。現在はワーキングホリデーで海外に住みながらパートタイムで日銭を稼ぎ、英語を練習し、現地で見つけた面白いものを取材して雑誌やwebマガジンで紹介中。