LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
海から帰ってこないね

ビーチから離れようとするナタリーを引き止めるように、俺は先を歩いた。

 

昼間、シンさんがスキンカヤックで海に出ていったことは知っている。

日が沈むこのタイミングで戻ってこないことは、かつて何日もあった。

しかし、ナタリーと約束してからは昼間だけの巡航にとどめていたはずだ。

 

ナタリーはビーチを離れ、ジャングルの方へ、ジャングルの方へと歩を進めようとするが、俺は先回りしてビーチに近づこうと進めた。

 

だがいくら海を眺めていても、シンさんの気配はない。

<海から帰ってこないね>

気を抜いたら出そうになるその言葉を、俺はグッと堪えていた。

 

最後の日となる今日に限って、まさか海難事故でも起きたというのか。

「今日、シンは海から帰らない・・・」ナタリーがボソッと呟いた。

 

続く

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。