LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
プールのように澄んだ海

ついに俺たちは、島を離れることにした。

大学院をやめる決意のできた俺には、これから無限とも思える自由な時間がある。

だからこの島に残ろうと思えばできたはずだ。

それでも俺は島を離れることを選んだ。

 

シンさんがこの先どこへ行くのか知らない。

ナタリーがこの先どこへ行くのかも知らない。

そしてナタリーが、シンさんについていこうかと考えてるかもわからない。

離岸した瞬間から3人は、ただ黙ってボートの下を眺めていた。

 

最初に口を開いたのは、ナタリーだった。

「まるでプールのように澄んでるね」

それは島に着いた日、ナタリーが海に入ったときに最初に言ったのとまったく同じセリフだった。

 

続く

前回の話/ニコールを追いかけて

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。