LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
空きのある1等席

俺はシンさんと向かい合ったシートにやっと腰を下ろした。

ナタリーの言う通り、このままバンコクまで座っていたら、本当にお尻が固まってしまいそうなほど硬い板張りのシートだった。

「ほかに違いはなかったか?」シンさんが尋ねた。

「あるには、あった」

「どんなこと?」ナタリーは興味津々だった。

 

長い列車旅だ。

どんな話題でも掘り下げるべきだろう。

「2等席に座っている外国人は、俺たちだけだ」

「そうなの?」ナタリーは驚きを隠せないでいる。

 

この国の所得では1等と2等の料金差は大きい。

しかし外国人にとっては大した差ではない。

さらに1等はいくらでも空きがある。

それにもかかわらずシンさんは、なぜにわざわざ2等列車を選んだのだろうか。

 

続く

前回の話/来る者は拒まず去る者を追わず

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。