LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
スピードボートに乗らなきゃ

ひと気がなくなってからゆっくりと列車を降りた。

ハーフドーム型のフアランポーン駅を出ると、今度はスピードボートの桟橋で大混雑している。

「並んでも、しばらくは乗れないよ」シンさんが言った。

「ランチでもしようよ。なんか温かいのを」ナタリーが言った。

 

列車に乗っているあいだ、職にありつけるとしたらパックに入った冷えた弁当だけだった。

たしかにまる1日以上、温かいメシを食っていない。

「でも、ランチを食べるにも、スピードボートに乗らなきゃ」と俺は返した。

気持ちはすでにカオサン通りへと向いていた。

「チャイナタウンへ行こう」シンさんが言った。

「チャイナタウンはどっち?」ナタリーが聞いた。

「このすぐ裏だよ」シンさんが返した。

たしかに。

カオサン通りへ向かうことだけしか考えていなかったから忘れていたが、チャイナタウンはフアランポーン駅の裏側。

歩いても行ける距離だ。

 

前回の話/穏やかな時間

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。