キング アーサーのここだけの話
単なる尾行か、ストーカーか
当時はまだストーカーなんて言葉はなく、俺にしてみれば、それは尾行だった。
でもいまになって考えりゃ、明らかにストーカー行為だ。
二人はバンランプー市場の屋台で食事をすませると、通りに面した1階部分は壁がなくオープンとなった、ヒッピー風情の集まるバーへ入っていった。
バーは2階までが吹き抜けになっていて、3階以上はゲストハウスになっていた。
混みいった店内だが、美人のニコールはひときわ目立っていたから、簡単に探すことができた。
一緒にいる長髪の男は確実に東洋人。
各国の東洋人を並べてみても、なんとなく日本人あるいは日系人という区別はつく。
男は黒々と日に焼けていたが、日本の血はどこかに流れているだろうと感じていた。だが、日本人であるという確証は持てなかった。
尾行しているときに盗み聞きした二人の会話は、すべて流暢な英語だったからなおさらだ。
まあそもそも、俺は男に興味があったのではなく、ニコールのウインクに刺さっただけだ。
しかし尾行を続けているうちに、こんな美女がなぜ、背のちっちゃな日本人ぽい男と一緒にいるのか。
それが解明できれば、俺にも外人の彼女ができるチャンスがあるのかもしれない。
そんな理由で、男の方にも少しずつ興味を持ちはじめていた。
続く