COOK,  LIFE

珈琲をもう一杯/第四話「アクマノマメ」

「ねえ、何でアクマ豆って言うの?」
「それは昔悪魔が棲むって言われた地球で発見された植物だからだよ。 アクマ汁は地球ではコーヒーって言われてたみたいだけどね。」

ペンギン星におけるアクマの実の主要産地は(地球で言うところの)赤道から概ね南北に25度の地域で、これらの地域には土壌や天候、気温等が栽培に適している神秘の森が広がっています。
実の収穫後は、栽培地での土地、天候事情、施設状況等により、そのまま干して脱穀するナチュラル精製、若しくは、水洗いを用いて実を剥がし、その後、乾燥、脱穀といったウォッシュド精製の工程を経てアクマ豆が誕生するわけです。 アクマの木は(地球で言うところの)アカネ科コフィア属に属する植物なのです。 ペンギン星人の中にはアクマ豆をフルーツ、果実だ!と、唱える向きもありますが、実の部分を食するのであればまだしも、種の部分を、それも焙煎して、挽いて、熱湯で淹れて飲むのです。 どこがフルーツなんでしょう。
アクマ豆はあくまでもアクマ汁の素なのです。

飲すると、目は覚醒し、疲れは取れる、かつて地球では羊飼いのカルディ少年がコーヒー豆とやらに驚いた気持ちをそのままに、神秘なる森で採れるこのアクマ豆は、ペンギン星の大人の飲みものなのです。

このアクマの種、地球よりロケットで打ち上げられて宇宙を彷徨ったのちペンギン星に辿り着いたとか。

悪魔汁(アクマジル)を飲むなら
ペンギン星、スリーペンギンズへ!

航空会社に勤めていたものの、うん十年前は「カヌーイストになるんだ!」と、チキンラーメンを食しながら川を下る。 かと思えば、「ウミンチュになるぞ!」と、沖縄の海で鯨を追いかけたりもした。 が、「ちゃんと仕事はしてるのか!」と、皆が疑問を呈しだしたので、「こりゃいかん」と退職。 まっとうな人生を送るべく、珈琲屋として再スタートを切る。 深煎り珈琲が味わえる『スリーペンギンズ』(横浜市磯子区滝頭 3-4-22)の店主に収まる。