LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
バブル景気真っ只中

無料で乗せろなんて無茶な交渉をしたから怒ったのだとばかり思っていたが、トゥクトゥクのドライバーは喜んでいるようだった。

「彼はなんで喜んでんの?」

「最終的に買わなくてもいいから客を宝石店とかに連れてけば、案内したドライバーはマージンを貰えるんや。そのマージン料やけど、日本人は特別高いんや。バブルでバカ買いしてくれる可能性があるからやな」

 

1990年代初頭、日本はバブル景気真っ只中。

現在の中国人のように、大型観光バスを何台も連ねてショップに横付けし、ブランド品などを集団で爆買いする。

そんな品のない日本人を世界中で見かけることができた。

 

「こんな小汚いバックパッカーを連れてっても、マージン料って貰えるの?」

「どんなに汚い日本人バックパッカーでも、ほかのアジア人とは簡単に見分けがつくやろ。奴らからしてみれば日本人は誰でも金持ちやから、ウェルカムやな」

「そうなのかな?」

「実際ここでは、買うときはなんでも交渉するやろ」

「そうだね」

「例えば、100バーツのTシャツ、ただでさえ安い500円のTシャツを10%ディスカウント、モア・ディスカウントって何回も繰り返しながら50バーツまで値切る」

「やったことあるよ」

「こっちはハーフプライスまでディスカウントできたって喜んでるけど、奴らはもっとしたたかなんやな」

 

続く

次回の話/生き死を賭けたプロ

前回の話/どこへでも自由に行ける

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。