LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
ニコールとの待ち合わせ

トゥクトゥクのドライバーは「時間がないから、店にいるのは1分間だけでいい」と俺たちに話し、ショップの扉を開けた。

 

そして、店中に響き渡る声を張った。

「政府の要人と医師を連れてきた」

 

俺たちは店内をしばしうろつくが、店主がドライバーに何か渡すのを確認すると静かに店を出る。

こんなコントみたいなことを繰り返しながら俺たちもドライバーも、それぞれの目的地を巡ることができた。

 

長距離バスターミナルに到着した頃には深夜になっていた。

スラータニーへ行くバスに乗り込み、出発を待つ。

長きにわたって客を乗せてきたバスはどこを見ても古ぼけていたが、シートカバーだけは数年前に換えられたようで、唯一違う時代のものとなっている。

しかし腰を下ろすともはやスプリング効果はなく、手応えなくスカッと底付く。

 

まだニコールがバンコクのどこかにいて、シンさんと一緒に島へ行くとすれば、このバスこそが待ち合わせ場所だと思っていた。

しかしついにニコールは現れず、夜の街をバスの古い車体はギシギシと軋むような音を立てながら、騒々しく走り出した。

 

続く

次回の話/人生を踏み外した瞬間

前回の話/余談の余談

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。