LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
突然降り出したスコール

海の方からはゴロゴロと、山側からゴトゴトと音が鳴り響き、両者がバンガローに迫ってきた。

ゴトゴトの主はピックアップ・トラックのタクシー。

ゴロゴロより一馬身先にゴールした。

ピックアップ・トラックの荷台から飛び降りたのは、あのユダヤ系の女だった。

 

荷台から降りて一息つく間もなく、突然降り出したスコールから逃げるように、彼女はバンガローの母屋に飛び込んだ。

そして辺りを見渡すと、カウチで寛ぐ俺たちに「ハ〜イ!」と、声をかけてきた。

雨にも関わらず「グッデイ」とシンさんは言い、俺は「ハイ!」とオウム返しに挨拶した。

 

「レセプションはどこ?」彼女は聞いてきたが、ここがまさにレセプション。

俺たちが海から戻ったときから、バンガローのオーナーは見当たらない。

「ブッキングしてないけど、泊まれるかしら?」と、彼女は続けざまに質問してきた。

 

「たぶん」と俺は応えたが、シンさんは「空きがなかったら、僕の部屋に泊まるといい」と言って笑った。

「じゃあ保険で、その部屋をブッキングね」と言って彼女も笑った。

 

シンさんはいったん立ち上がり、「オーナーはすぐに戻ってくるよ。それまで座って待ってれば」と席を譲った。

彼女はシンさんの勧めに応じ、ひとり掛けのカウチに腰を降ろした。

 

続く

次回の話/日本語を使うな

前回の話/達成感に満たされた俺

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。