キング アーサーのここだけの話
屋根の上のアホウ
ビビってると思われたくない俺は、そのまま屋根に残った。
このオンボロ船の屋根の上でまったく動じることもなく横になっているシンさんを、屋根の上のアホウだと思った。
乗客が重すぎるのか、それとも安全航行なのか、鏡面のような穏やかな海を船はゆっくりと進んでいく。
太陽が昇ると上昇気流が発生したのか、風が吹き出し海面は忙しく揺れはじめるが、漁船出身の船だけあって風の影響を感じることもなく、波を切って進む。
視界は360度どこを向いても陸の影はなく、すべてが海となったころには船を信じられるようになり、恐怖を感じなくなっていた。
いや恐怖を感じなくなっていたのではなく、ここで沈没したら泳ぐにも目指す方向はわからないから、もしかしたら諦めがついたのかもしれない。
船はまずサムイ島へと到着した。
ここでほとんどの客が下船し、積荷もすいぶんと長い時間かけて降ろされた。
シンさんから島へ行くとは聞いていたが、どこの島なのかは聞かされていなかった。
下船する気配はないので、サムイ島でないことだけ確かなようだ。
続く
次回の話/ボン・ボヤージュ!
前回の話/明らかなる違法建造
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