LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
屋根の上のアホウ

ビビってると思われたくない俺は、そのまま屋根に残った。

このオンボロ船の屋根の上でまったく動じることもなく横になっているシンさんを、屋根の上のアホウだと思った。

 

乗客が重すぎるのか、それとも安全航行なのか、鏡面のような穏やかな海を船はゆっくりと進んでいく。

 

太陽が昇ると上昇気流が発生したのか、風が吹き出し海面は忙しく揺れはじめるが、漁船出身の船だけあって風の影響を感じることもなく、波を切って進む。

 

視界は360度どこを向いても陸の影はなく、すべてが海となったころには船を信じられるようになり、恐怖を感じなくなっていた。

 

いや恐怖を感じなくなっていたのではなく、ここで沈没したら泳ぐにも目指す方向はわからないから、もしかしたら諦めがついたのかもしれない。

 

船はまずサムイ島へと到着した。

ここでほとんどの客が下船し、積荷もすいぶんと長い時間かけて降ろされた。

 

シンさんから島へ行くとは聞いていたが、どこの島なのかは聞かされていなかった。

下船する気配はないので、サムイ島でないことだけ確かなようだ。

 

続く

次回の話/ボン・ボヤージュ!

前回の話/明らかなる違法建造

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。