キング アーサーのここだけの話
今夜からしばらく寝ない
目を覚ましたのは、すでに西日が傾いている時間帯だった。
シンさんのバンガローからはいまだイビキが聞こえてくる。
喉の渇きを感じた俺は、母屋のレストランへと足を運んだ。
ドリンクケースは1日中太陽の光を浴びていたので、口に入れなくともドリンクは熱いことが容易に想像できた。
温かい炭酸飲料より、甘ったるくも無炭酸のジュースの方が幾分マシだろう。
そう思ってドリンクケースを眺めるが、どれも炭酸入りばかりだ。
これが冷えていたなら、こんなボロ屋でも最高のリゾート地に感じただろう。
一番冷たいコーラと念を押してオーダーし、俺は空いていた席に着いた。
間もなく外に出していたため埃だらけになったボトルを、軽く拭っただけのコーラを持ったバンガローのオーナーがやってきた。
ボトルを渡された瞬間にうんざりし、口を聞く気にもならなかった。
「ずいぶん早い起床だな」それがオーナーの本心なのかよく伝わらない。
「ほかの人は」
「夜に備えて、まだ寝てる。今夜はフルムーンパーティだ。みんな爆発するぞ」
「そんなにスゴイのか」
「スゴイさ。今夜からしばらく寝ないで遊び続ける奴もいるくらいだ」
今夜から寝ないのではなく夜を待たず、すでに緩やかにスタートを切れないものなのか。
俺はこのしきたりを訝しんでいた。
続く
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