LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
人里離れた場所

その頃のハードリンビーチは、満月でない限り人が来ないようなジャングルの奥にある小さな海岸だった。

だからこそ、人が集まってどんなに大騒ぎしても、誰にも迷惑がかからない。

そんな人里離れた場所だった。

 

月夜のジャングルは、野生動物たちがやたらと元気で、雄叫びがサラウンドで駆け巡っていた。

 

そのジャングルの獣道を懐中電灯もなしで、シンさん先頭で進んで行く。

「どんな大型の獣が、あんな雄叫びをあげるのかな」俺はビビりながら尋ねた。

「体長2メートルはあるだろうなあ、なんて応えたら、なおさらビビるだろ」シンさんは即答した。

「うん、ビビるだけじゃなく、引き返す」

「じゃあ、聞かない方がいい」

「ってことは、2メートルあるってこと」

「さあな。でもこの島には大型の獣なんていないことだけは、約束するよ」

「約束してくれるなら、さあな、っていう必要ないだろ」俺は声を張り上げた。

「アーサーの方が、よっぽど獣の雄叫びよ」ナタリーが笑った。

「ナタリーは、どっちの味方なんだよ!」

 

そんな他愛もない論争を続けながらジャングルの中を歩いていると、満月が海面ギリギリに浮かぶビーチが目の前に突如として現れた。

 

続く

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。