キング アーサーのここだけの話
ここから先は自由行動
そのビーチは自分たちの会話がままならないほどの音楽と踊りに包まれていた。
「ここから先は、自由行動な。明日、バンガローで会おう」シンさんは言った。
そう言われても、<はい、そうですか>とは、とても応えられない。
ジャングルの獣道は一本道じゃないから、バンガローまでたどり着く自信はないし、ここでのしきたりもわからない。
しかし大胆にも「じゃあ、明日」とナタリーは応えた。
俺はついに返事をせず、ナタリーは返事をしたにも関わらず、シンさんの後ろをついて歩いた。
ビーチとジャングルの際には、いくつもの屋台が並んでいた。
そのひとつの屋台でシンさんは歩みを止め、ちょび髭の店主らしき男に向かって人差し指を一本立てた。
「エスタ・パ〜デル・マノ・プラ・ビ〜ダ・エルマ〜ノ!」ちょび髭の男はダミ声で言った。
「エスタ・パ〜デル・マノ・プラ・ビ〜ダ・エルマ〜ノ!」ナタリーはダミ声まで再現し、マネして言った。
シンさんは笑いながら、ナタリーに向かって答えた。
「シ・プラ・ビーダ!」
ナタリーは、ちょび髭の男に向かって人差し指と中指、合わせて2本の指を立てて言った。
「シ・プラ・ビーダ!」
ちょび髭の男とナタリー、シンさんの3人は高らかに笑った。
俺にはなにが面白いのか、さっぱりわからなかった。
続く
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