LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
ここから先は自由行動

そのビーチは自分たちの会話がままならないほどの音楽と踊りに包まれていた。

「ここから先は、自由行動な。明日、バンガローで会おう」シンさんは言った。

 

そう言われても、<はい、そうですか>とは、とても応えられない。

ジャングルの獣道は一本道じゃないから、バンガローまでたどり着く自信はないし、ここでのしきたりもわからない。

しかし大胆にも「じゃあ、明日」とナタリーは応えた。

 

俺はついに返事をせず、ナタリーは返事をしたにも関わらず、シンさんの後ろをついて歩いた。

ビーチとジャングルの際には、いくつもの屋台が並んでいた。

そのひとつの屋台でシンさんは歩みを止め、ちょび髭の店主らしき男に向かって人差し指を一本立てた。

 

「エスタ・パ〜デル・マノ・プラ・ビ〜ダ・エルマ〜ノ!」ちょび髭の男はダミ声で言った。

「エスタ・パ〜デル・マノ・プラ・ビ〜ダ・エルマ〜ノ!」ナタリーはダミ声まで再現し、マネして言った。

 

シンさんは笑いながら、ナタリーに向かって答えた。

「シ・プラ・ビーダ!」

ナタリーは、ちょび髭の男に向かって人差し指と中指、合わせて2本の指を立てて言った。

「シ・プラ・ビーダ!」

 

ちょび髭の男とナタリー、シンさんの3人は高らかに笑った。

俺にはなにが面白いのか、さっぱりわからなかった。

 

続く

次回の話/映画を字幕で観ている俺

前回の話/人里離れた場所

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最初の話/はじまりのはじまり

 

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。