キング アーサーのここだけの話
虚栄心も羞恥心もなくなった俺
アルコールともまた違う心地よさを俺は感じていた。
群衆の中で、誰でもない存在となって踊っていた3人だったが、その群れからシンさんが離れていく。
俺はそれを見逃さず、シンさんについていった。
ビーチに寝転ぶと、明るすぎる月光を太陽のごとく浴びることができた。
「なあ、イージーライダーの冒頭の重要なシーンて、どんな場面」ナタリーはいなかったので、俺は日本語で質問した。
そのピンクの液体のおかげで、虚栄心も羞恥心もなくなった俺は、自分の中のある種の殻を打ち破ることができたように感じた。
「メキシコ人からコカインを買うときの両者のやりとりや」日本語で話すシンさんは、やはり関西弁だった。
「えっ! じゃあ、さっきのドリンクはコカインが入ってるってこと?」
「さあな。でも安すぎるから、コカインは入ってないやろ」
「じゃあ、何かほかの薬物は入ってるってこと?」
「それも知らん。ただわかっているのは、あのドリンク名はスピードポンチ。一説にはフルーツポンチにフルーツだけやのうて、スピードが溶いてあるってウワサや」
「それヤバイじゃん」
「本当だったら、相当ヤバイ。でもほら、あっこ見てみい。警官までスピードポンチ飲んどるやろ」
「じゃあ、合法なんだね」
「警官が飲んどるからといって、合法とは限らへん。日本で警官が銃を所持しててもOKやけど、民間人が持ってたらNGやろ」
続く
次回の話/プラシーボって何や?
前回の話/意味もわからずにいる俺
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