LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
虚栄心も羞恥心もなくなった俺

アルコールともまた違う心地よさを俺は感じていた。

群衆の中で、誰でもない存在となって踊っていた3人だったが、その群れからシンさんが離れていく。

俺はそれを見逃さず、シンさんについていった。

 

ビーチに寝転ぶと、明るすぎる月光を太陽のごとく浴びることができた。

「なあ、イージーライダーの冒頭の重要なシーンて、どんな場面」ナタリーはいなかったので、俺は日本語で質問した。

そのピンクの液体のおかげで、虚栄心も羞恥心もなくなった俺は、自分の中のある種の殻を打ち破ることができたように感じた。

「メキシコ人からコカインを買うときの両者のやりとりや」日本語で話すシンさんは、やはり関西弁だった。

 

「えっ! じゃあ、さっきのドリンクはコカインが入ってるってこと?」

「さあな。でも安すぎるから、コカインは入ってないやろ」

「じゃあ、何かほかの薬物は入ってるってこと?」

「それも知らん。ただわかっているのは、あのドリンク名はスピードポンチ。一説にはフルーツポンチにフルーツだけやのうて、スピードが溶いてあるってウワサや」

「それヤバイじゃん」

「本当だったら、相当ヤバイ。でもほら、あっこ見てみい。警官までスピードポンチ飲んどるやろ」

「じゃあ、合法なんだね」

「警官が飲んどるからといって、合法とは限らへん。日本で警官が銃を所持しててもOKやけど、民間人が持ってたらNGやろ」

 

続く

次回の話/プラシーボって何や?

前回の話/意味もわからずにいる俺

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。