キング アーサーのここだけの話
お持ち帰りできるかも
女の子はふたりとも俺たち同様、やたらとハイテンションだった。
意気投合するまで、多くの時間も、多くの言葉も必要なかった。
俺の片言の英語でも、彼女たちを容易に長居させることができた。
それは、スピードポンチによるものなのか、それともフルムーンパーティの持つ雰囲気がそうさせるのか。
ジュリーとケイトと名乗ったふたりは、座ってないで踊ろうと、俺たちを誘った。
俺はそうとう酔っていたのか、なかなか立ち上がれずにいたが、シンさんはすくっと立ち上がって言った。
「アイ マスト ゴー」
それまで仲良く喋っていただけに彼女らは一瞬呆然としたが、行くな、一緒に踊ろうと強くねだりはじめた。
彼女らは<一緒に遊ぼう>と言い、シンさんは<行くところがある>と応える。
男女のセリフが逆転するようなやりとりがしばらく続いた。
それにしてもこんな夜中に、どこへ行くところがあるというのだろうか。
日本語が母国語でない人の前では絶対に日本語を話さないシンさんが、ウインクしながら俺に関西弁で言った。
「アーサー、ふたりともお持ち帰りできるかもな」
そう言葉を残して駆け出した先には、焚き火の前にひとりぼっちで座るナタリーがいた。
続く
次回の話/ジュリーとケイトとともに入居
前回の話/ストライクすぎる女の子
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