LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
お持ち帰りできるかも

女の子はふたりとも俺たち同様、やたらとハイテンションだった。

意気投合するまで、多くの時間も、多くの言葉も必要なかった。

俺の片言の英語でも、彼女たちを容易に長居させることができた。

 

それは、スピードポンチによるものなのか、それともフルムーンパーティの持つ雰囲気がそうさせるのか。

ジュリーとケイトと名乗ったふたりは、座ってないで踊ろうと、俺たちを誘った。

 

俺はそうとう酔っていたのか、なかなか立ち上がれずにいたが、シンさんはすくっと立ち上がって言った。

「アイ マスト ゴー」

それまで仲良く喋っていただけに彼女らは一瞬呆然としたが、行くな、一緒に踊ろうと強くねだりはじめた。

彼女らは<一緒に遊ぼう>と言い、シンさんは<行くところがある>と応える。

男女のセリフが逆転するようなやりとりがしばらく続いた。

それにしてもこんな夜中に、どこへ行くところがあるというのだろうか。

 

日本語が母国語でない人の前では絶対に日本語を話さないシンさんが、ウインクしながら俺に関西弁で言った。

「アーサー、ふたりともお持ち帰りできるかもな」

そう言葉を残して駆け出した先には、焚き火の前にひとりぼっちで座るナタリーがいた。

 

続く

次回の話/ジュリーとケイトとともに入居

前回の話/ストライクすぎる女の子

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。