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ヒツジ飼いの冒険
第34話 律儀

カルボはルカの言葉を理解しているのか、レオナルドより先に歩き出した。

運命には抗えない。

レオナルドもカルボの後ろを歩き出した。

 

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ルカはカルボの背中から一瞬ふわりと浮いて、またすぐ背中に着地した。

先ほどまで進行方向の向きにとまっていたのに、わざわざ飛んでまで向きを後ろに変えたのだ。

 

「王国行って、なにがしたい?」ルカが聞いた。

「なにがって言われても、なにができるのかもまだわからない。ただすべてを見てみたい。オレが知らないすべてを」レオナルドは応えた。

「なにを知らない?」ルカは続けた。

「オレはなにを知らないのかも、まだわかってない」

 

鳥の首は平行に300度くらい回転できるほど柔軟だ。

進行方向に向いてとまっていても、十分後ろにいるレオナルドと目を合わせて話せるほど首がまわるはず。

それなのにルカは飛んでまで向き直った。

律儀な性格なのだとレオナルドは理解した。

 

それなのにレオナルドは律儀に言葉を返せない。

ただわからないものはわからない。

知らないものは知らないと言えるレオナルドの実直さをルカは見抜いた。

 

ルカはそばにいてレオナルドを観察しているが、赤い羽の交渉人は人の視力では及ばないほど遠くからじっと観察していた。

レオナルドの視力ではその目を見ることはできないが、赤い羽の交渉人の目の動きを常に感じていた。

 

しかしそれをルカに伝えることはしなかった。

 

ヒツジ飼いの冒険(第35話)へ続く

ヒツジ飼いの冒険(第1話)から読む

 

*ヒツジ飼いの冒険は毎週日曜日12:00公開を予定しています。

カヌーイストなんて呼ばれたことも、シーカヤッカーと呼ばれたこともあった。 伝説のアウトドア雑誌「OUTDOOR EQUIPMENT」の編集長だったこともあった。いくつもの雑誌編集長を経て、ライフスタイルマガジン「HUNT」を編集長として創刊したが、いまやすべて休刊中。 なのでしかたなくペテン師となり、人をそそのかす文章を売りながら旅を続けている。