LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
すべては自由になった

本来の旅程では、俺はバンコクにいなくてはならないはず。

夜には帰国の途に着く予定だった。

それなのにいま、南の島の寝返りも自由に打てないほど狭いバンガローにいる。

まあ寝返りについては昨夜、ジュリーとケイトからクレームが入ったので自粛しようと考えただけだ。

 

寝返りの自由はないが、日本に帰ることをやめたことですべては自由になった。

それ以外はジュリーとケイトも俺を自由にさせてくれている。

 

仰向けになり、額に汗をかき、肩で息をしているジュリー。

すぐ隣で、平気で横になっているケイトが目を閉じたまま言った。

「シンは帰ってきたの?」

「明け方、物音がしてたから、帰ってきたんだと思う」俺も肩で息をしながら、膝立ちのまま応えた。

 

続く

次回の話/それでも俺は自由だ

前回の話/月明かりが照らすビーチ

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。