キング アーサーのここだけの話
文明社会の味
冷えたコカコーラにありつければ最高と思っていたが、このビーチリゾートでは冷えたハイネケンまで在庫していた。
バーカウンターの上部に設置されたテレビモニターでは、映画「カクテル」がエンドレスで映し出されている。
アロハシャツに身を包んだボーイは、俺たちの元へ踊りながらビールを運んできた。
「文明社会の味がする」
ビールに口をつけた俺はそう言ったものの、決して褒め言葉ではなかった。
「ビールが冷えてるって嬉しいけど、格別じゃないね」ケイトも続いてくれた。
賑やかなビーチリゾートの存在を否定するものではない。
だが、そのときの自分たちが望んでいたものは作られすぎたウソっぽいそれではなく、文明の先端からちょっと遅れてるくらいが心地よかった。
ビールがこれほどまでにほろ苦く感じたことは、それまでなかったのは事実だ。
続く
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