キング アーサーのここだけの話
道幅いっぱいの厄介者
格別じゃないと言った俺たちに反するように、シンさんは何杯ものビールをオーダーしていた。
「あっちのバンガローに帰ったら飲めないわ。ここでしかできないことをするだけよ」とナタリーもハイネケンのお代わりをオーダーした。
この2人の行動をしばらく見守っていた俺たち3人だが、やがてスイッチは切り替わった。
格別じゃないと言った張本人であるケイトも続くように、ビールジョッキを踊るボーイに渡しオーダーを繰り返した。
長いランチタイムを終え、俺たちはまた帰路となるジャングルを横断しはじめた。
「演出が気に入らないのは確かだ。でもビールに責任はない」振り返ってもビーチリゾートが見えなくなった頃、シンさんは言った。
日も暮れかかり涼しくなったせいか、蚊がやたらと出没しはじめた。
耳元にあの不快な羽音が聞こえるたび、大げさに振り払う。
振り払ってどうにかなるものはいいが、やがてどうにもならない存在に出くわした。
道いっぱいに横たわるオオトカゲ。
その体長は、優に2メートルを超えていた。
続く
次回の話/寄り道はいいけど
前回の話/文明社会の味
「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!