キング アーサーのここだけの話
毎度毎度、朝帰りの男
どれほど重い空気の夜を過ごしたことだろうか。
嗚咽するナタリーにかける言葉もなく、誰もが押し黙った。
シンさんはいつ帰ってくるともわからない。
それでも待つべきなのだろうか。
心配といえば心配だが、まだ満月から数日過ぎたばかり。
月夜に照らされた海は想像を超えて明るい。
これまでの経緯からも、天候の安定からも、きっと何事もなく帰ってくるだろう。
だが、帰りの時間は、まったく予想できない。
だからといって、「もう寝る」とは誰も言い出せない空気をナタリーが作っていた。
何の会話も生まれない、ただただ重い空気が少しだけ軽やかになったのは夜が明けてからだった。
遠くにシンさんが見えはじめた。
俺とケイト、ジュリーは言葉に出さずとも「やっと寝床につける」そう心で確認しあった。
続く
次回の話/意味を持たないVサイン
前回の話/気の利いた冗談なんて言えない
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