LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
毎度毎度、朝帰りの男

どれほど重い空気の夜を過ごしたことだろうか。

嗚咽するナタリーにかける言葉もなく、誰もが押し黙った。

 

シンさんはいつ帰ってくるともわからない。

それでも待つべきなのだろうか。

 

心配といえば心配だが、まだ満月から数日過ぎたばかり。

月夜に照らされた海は想像を超えて明るい。

 

これまでの経緯からも、天候の安定からも、きっと何事もなく帰ってくるだろう。

だが、帰りの時間は、まったく予想できない。

だからといって、「もう寝る」とは誰も言い出せない空気をナタリーが作っていた。

何の会話も生まれない、ただただ重い空気が少しだけ軽やかになったのは夜が明けてからだった。

遠くにシンさんが見えはじめた。

俺とケイト、ジュリーは言葉に出さずとも「やっと寝床につける」そう心で確認しあった。

 

続く

次回の話/意味を持たないVサイン

前回の話/気の利いた冗談なんて言えない

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。