キング アーサーのここだけの話
水平線より遠い先
俺に詮索されたくないのか、ナタリーは場所を毎日移していた。
俺はトイレのたびにバンガローを飛び出し、ビーチを見渡してナタリーを探す。
しかしナタリーを発見しても声をかけない。
ナタリーがひとりでいるのは詮索されたくないだけの理由じゃない。
こんなのどかな島で、ひとりで過ごしてもやることはない。
死ねるほどドラッグが手に入っても、ひとりでハマることはない。
相手あってのドラッグだ。
ひとりでドラッグにハマるほど、つまらないものもないのだから。
昼間から、一緒にいてあげればいいのに。
「本当にオンナごころのわからないヤツだ」ナタリーが見つめる水平線より遠い先にいるだろうシンさんに向かって、俺は苦言した。
続く
次回の話/オンナごころのわからないヤツ
前回の話/音の鳴らないヘッドフォン
「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!