キング アーサーのここだけの話
それ以上ないほどの汚い言葉
俺のバックパックひとつしか残っていない部屋。
彼女たちの荷物もないことはナタリーにも十分伝わっただろう。
「どうしよう」ナタリーはまた気弱に狼狽えた。
俺は呼吸を整え、精一杯明るく応えた。
「心配するほどのことじゃない。またこれからも、いくつもの出会いがある。次はもっと美女3人同時に付き合ってみせる」
これ以上ないほどの気持ちで、俺は強がってみせた。
しかしナタリーからは、それ以上ないほどの汚い言葉で返ってきた。
「ファック」
ナタリーの目は狼狽えながらも真剣に怒っていた。
俺はその目を直視できず、バルコニーを見やりながらもう一度繰り返した。
「心配するほどのことじゃない」
バルコニーでは、彼女たちが忘れていった洗濯物が揺れていた。
しかしナタリーが発したのは、予想もしていない言葉だった。
「ケイトとジュリーのことなんかじゃないの。シンが大変なの!」
続く
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