LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
裏切りでもなんでもない

俺の会話はワンテンポ遅れる。

なにしろ日本語で言いたいことを英語で組み立て直さなければいけないからだ。

 

<また夜の海に漕ぎ出したまま帰ってこないのか。それこそ心配するほどのことじゃないよ>頭の中でこの言葉を英訳している最中に、別の思いも浮かんできた。

だからワンテンポの遅れどころではなくなった。

 

まさかケイトとジュリーは、シンさんと一緒にこのバンガロー村を出ていったのか。

そんな裏切りってありなのか。

でも考えてみれば、契約書を交わしているわけでもなんでもない。

 

彼女たちと出会ったのは数日前。

シンさんとだって数週間前に知り合ったばかり。

そして、どっちが先に手をつけたかって話で、裏切りでもなんでもない。

 

「やられたな!」俺は精一杯、脳天気に応えた。

そしてナタリーの様子を伺いながら付け加えた。

「じゃあ、俺たちでやり返すか?」

 

続く

次回の話/噛み合わない会話

前回の話/それ以上ないほどの汚い言葉

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。