キング アーサーのここだけの話
一刻も早くバンガローへ
薬をシンさんに届けるため、俺は急ぎたかった。
精神が完全に崩壊していたはずのナタリーに、こんなにも効果があったのだから、一刻も早くバンガローへ届けねば。
しかし、ナタリーに薬の効果があったのは一瞬のことだった。
無論、マラリアに効く島に伝わる薬として薬剤師から渡されたもので、ナタリーはもともとマラリアを罹患したわけでもない。
ナタリーになんらかの効果があろうはずがない。
しかもナタリーがこの丸薬を飲んだわけでもない。
ただ島に伝わる特効薬はマラリアに効くだけでなく、万能薬であると俺は信じたかった。
バンガローではシンさんが意識不明。
目の前ではナタリーが精神崩壊。
この窮状を得体の知れぬ丸薬に、俺はすがった。
続く
次回の話／心神喪失のナタリー
前回の話／見るだけで効く薬
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最初の話／はじまりのはじまり
小林 Arthur 朝太郎
キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は＜アサタロー＞と発音しにくいらしいので、海外では＜アーサー＞と名乗っていたら、親しい外人仲間が＜キング・アーサー＞とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ？」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に＜カンジチョー＞のあだ名がつき、総理大臣になると＜ソーリ＞と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも＜ソーリ＞のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。
