珈琲をもう一杯 / 第四十一話「DON’T START ME TO TALK’N」
俺達が
立ち話している時に、
誰かがペン太にって
封の開いた珈琲豆を
持って来たのさ。
ペン太の奴は淹れようと
したので
「おいペン太、
いつ封を開けたのか分からない
珈琲豆は飲んじゃダメだ。
酸化してるかも知れないし、
何が入ってるか分からないぞ。」
そして、奴の持つ豆袋を
叩き落としたのさ。
奴は
「俺に説教しないでくれ」
って言い返したんだ。
そう言われちゃ、俺は、
ただ黙って見てるだけだったよ。
その時、
再び封の切ってある豆の袋が来たんだ。
ペン太は淹れて飲んだのさ。
それが俺が奴を見た最後さ。
そう、俺は サニー・ ボーイ ・
ウイリアムソン
(ジャケットの人物は俺じゃないぜ)
んっ? なんの話?
アイスコーヒーを飲みながら
サニー・ボーイの
Don’t Start Me To Talk’nを
聴いていたら魂を揺さぶられ
睡りこけ、夢を見てしまった。
ロバート・ジョンソンの
死因については諸説ある
ようだけど、
ペン太をロバート・ジョンソンに
珈琲豆袋をウイスキー瓶に
換えれば、これも諸説の一つ。
ロバート・ジョンソンしかり
サニー・ボーイも十字路で
悪魔に魂を売ってハープの
腕を手に入れたんじゃ
ないだろうか。
腰の回りにブルースハープ
を何本か入れたベルトを
していてカッコ良かったん
だろうなぁ。
ペン太も十字路で悪魔から
「深煎り豆を売らんかい。」
(魂を売らんかい、はちょっと
怖い) と言われるのを待っている
ので、何時もポッケには
深煎り豆を準備してるんだけど
なかなか声がかからないなぁ。
もうすぐ8月16日、
ロバート・ジョンソンが
世を去って82年。
そうそう、夢の中での
サニーからの忠告。
珈琲豆は袋を開封したら
密封缶や瓶に入れて下さいね。