LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
人工的な明かりって、嫌やな

言葉に発するなど何らかの同意があったわけではないが、俺とナタリーはいつの間にかシンさんを迎えに港へと歩き出していた。

 

夕暮れのジャングルですれ違うのだとばかり考えていたが、シンさんの影はまったくない。

俺たちふたりはついに港へと到着してしまった。

新月の夜は確かに暗く、星空を鮮明に映し出していた。

一方で、遠く離れた対岸が星空よりも明るく、天然色とは程遠い極彩色がケバケバしく、俺はこの島にずっと残っていたいとさえ思わせた。

ナタリーは対岸を拒絶するように、静かに後ずさりした。

 

ナタリーも今の暮らしを続けていけるのなら、島に残りたいと思っていたに違いない。

抗うことのできない時間の経過。

抗うことができないからこそ、わずかな時間だけでも、そっとしておいてあげたかった。

だから俺はナタリーを追うことはしなかった。

 

近くにナタリーの気配を感じなくなったタイミングで、日本語が聞こえた。

「人工的な明かりって、嫌やな。でも100万ドルの明かりとか言って、人は集まってくるんやろうな」

 

続く

前回の話/1日でも長く楽しい旅を

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。