キング アーサーのここだけの話
人工的な明かりって、嫌やな
言葉に発するなど何らかの同意があったわけではないが、俺とナタリーはいつの間にかシンさんを迎えに港へと歩き出していた。
夕暮れのジャングルですれ違うのだとばかり考えていたが、シンさんの影はまったくない。
俺たちふたりはついに港へと到着してしまった。
新月の夜は確かに暗く、星空を鮮明に映し出していた。
一方で、遠く離れた対岸が星空よりも明るく、天然色とは程遠い極彩色がケバケバしく、俺はこの島にずっと残っていたいとさえ思わせた。
ナタリーは対岸を拒絶するように、静かに後ずさりした。
ナタリーも今の暮らしを続けていけるのなら、島に残りたいと思っていたに違いない。
抗うことのできない時間の経過。
抗うことができないからこそ、わずかな時間だけでも、そっとしておいてあげたかった。
だから俺はナタリーを追うことはしなかった。
近くにナタリーの気配を感じなくなったタイミングで、日本語が聞こえた。
「人工的な明かりって、嫌やな。でも100万ドルの明かりとか言って、人は集まってくるんやろうな」
続く
前回の話/1日でも長く楽しい旅を
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