LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
線路のずっと先の先

もうすぐ列車はやってくる。

もうすぐだ。

もうすぐ。

 

俺はなんの根拠もないのに列車が来ることを信じ、駅のホームに直立し、線路のずっと先の先を眺めていた。

シンさんはホームのはずれで、バックパックを枕にして横になっている。

ナタリーはさすがに横にこそなっていないが、尻をつき、足をホームから投げ出しブラブラとさせている。

2人がホームのはずれを選んだのは、人の往来がない分、吐かれたツバが少ないからだろう。

 

俺の足元にはツバだけでなく、タバコの吸い殻、チキンの骨、弁当のパック、コンビニの袋とあらゆるゴミが散らかっている。

 

早くここを脱出したい。

この汚い場所から逃げ出したい。

ここではない、どこかへ。

そう思えば思うほど列車の到着が待ち遠しく、同時に自分ではどうにもできないことがもどかしかった。

 

続く

前回の話/あの列車に乗って行こう

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。