LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
俺が、俺になった島

ボートは乗客をたくさん乗せているためか、すぐにはスピードが上がらず、桟橋を思いのほかゆっくり離れる。

 

甲板を思い切り蹴り上げれば、いまならまだ島に着地できる。

いまならまだ。

いまならまだ。

その言葉がしばらく俺の頭の中をとぐるぐるまわっていた。

 

しかし行動に移さないまま、やがて島は小さくなっていった。

さようなら、俺が、俺になった島。

 

「また帰ってくるからさ」

離れて行く島に、そう告げた。

 

続く

前回の話/プールのように澄んだ海

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。