キング アーサーのここだけの話
コンクリートに囲まれた波止場
ボートが着岸した。
ついに3人がそれぞれの岐路に立ったということか。
「ここで1泊していこうよ」俺は2人に向かって提案した。
俺、シンさん、ナタリーの順に並び、等間隔に離れているがその声は一番後ろにいるナタリーにもはっきりと聞こえたはずだ。
しかし誰からも返事がない。
シンさんは声なく後ろに振り返ると2人はしばらく見つめ合い、ナタリーまた声なくうなずいた。
「久しぶりに都会の夜を堪能するのも悪くないな」シンさんはやっと口を開いた。
「まだ午前中なんだから、夜までずいぶん時間がある。いまから飲んでたんじゃ夜まで持たない」俺はこの白けた空気を変えたくて、無理におどけた。
「じゃあ、ビーチに行こう」ナタリーはその空気を読んだのか、昨日まで島の美しい砂浜で2週間も過ごしていたというのに、また俺たちを海へと誘った。
俺たちの目と鼻の先には、コンクリートに囲まれた波止場で遊ぶ少女がいる。
ここには、あんなにも美しかったビーチに匹敵する場所なんてあるのだろうか。
続く
前回の話/髪引かれる思いなんてあるのか
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