キング アーサーのここだけの話
線路のずっと先の先
もうすぐ列車はやってくる。
もうすぐだ。
もうすぐ。
俺はなんの根拠もないのに列車が来ることを信じ、駅のホームに直立し、線路のずっと先の先を眺めていた。
シンさんはホームのはずれで、バックパックを枕にして横になっている。
ナタリーはさすがに横にこそなっていないが、尻をつき、足をホームから投げ出しブラブラとさせている。
2人がホームのはずれを選んだのは、人の往来がない分、吐かれたツバが少ないからだろう。
俺の足元にはツバだけでなく、タバコの吸い殻、チキンの骨、弁当のパック、コンビニの袋とあらゆるゴミが散らかっている。
早くここを脱出したい。
この汚い場所から逃げ出したい。
ここではない、どこかへ。
そう思えば思うほど列車の到着が待ち遠しく、同時に自分ではどうにもできないことがもどかしかった。
続く
前回の話/あの列車に乗って行こう
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