LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
パリへ行ったことがあるか?

ゴミを集めるのを仕事にしている人の仕事を奪うことになるからゴミを片付けない。

そんなのは理由にならないだろう。

個々がゴミを片付けていれば、そもそもゴミを集める仕事なんていらない。

 

俺の考え方は間違っているのだろうか。

そうヴィンセントに問いただしてみた。

するとヴィンセントは間を置かず「間違っている」と返した。

 

「アーサーはパリへ行ったことがあるか?」

そのときの答えは、「ノー」だった。

「パリを美しい街だと思うか?」

行ったこともないが「イエス」と応えた。

「世界中の誰に聞いても、同じ答えが返ってくる」とヴィンセントは真面目な顔で微笑んだ。

「そうなんだ?」と返しながらも、俺は安心した。

「パリの住民は犬を散歩させても、クソを拾わない。なぜだかわかるか?」

「わからない」と応えた。

「クソを拾う姿が美しくないからだ。クソを持って歩くのは、もっと美しくない。街に似合わないんだ」

「じゃあ、クソは?」

「しばらくそのまんまだ。それでも世界中の誰もが、パリを美しい街だと言う」とヴィンセントは笑った。

「ずっとそのまま放っておくのか?」俺は身を寄せて聞き返した。

「クソを集めるのを仕事にしている人がいる。プロが掃除しているから、あの街はキレイなんだ」

飼い主がクソを片付けていれば、そもそもクソを集める仕事なんていらない。

 

続く

前回の話/ゴミを集める仕事

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。