LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
ゴミを集める仕事

人をさんざん待たせておいて、それでも駅での停車時間は変わらない。

待ち人だった旅人は、我先にと列車に乗り込んでいく。

 

ここはラッシュ時の東京ではない。

停車時間は10分あるので慌てる必要もないだろう。

そう思ったのだが、「いい席がなくなる」と後ろから駆け寄ってきた旅人が俺の肩を押し、列車に詰め込んだ。

俺は言葉で反応できず、ただ後ろを振り返った。

 

よく日に焼けた肌、天然パーマらしい手入れは行き届いていないがよくまとまったクリクリの黒髪。

<アム・ヴィンセント>俺の目を上目遣い見て言った。

背は俺より低い。

<アーサー>名乗り返すと、ヴィンセントは遮るように言葉を続けた。

 

「ゴミを集めて駅員に渡しただろう。あれはNGだ」見られていたようだ。

「なぜNGなんだ」母国語が英語でない人の英語は非常に聞き取りやすい。

ラテン系の場合は特に。

「ゴミを集めるのを仕事にしている人がいる。その仕事を奪うことになる」

なんたる理屈だ。

 

続く

前回の話/意図したことが読めない

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。